娘を出産した病院は自室でなく授乳室で看護師さんに見てもらいながら授乳するというかたちでした。教えてもらえるし、赤ちゃんの様子も見てもらえるという安心感はありましたが、赤ちゃんを預けて授乳しにこないお母さんがいると「お母さんはいつくるのかしらね〜おっぱい不味くなっちゃうわね〜ねてるのかしら〜」と赤ちゃんに話しかけている看護師さんがいて、ちゃんと授乳しないとあんなこと言われちゃう!と考えが授乳室に行くことに縛られてしまい、2時間おきにアラームをかけ、せっせと授乳室に通うことが目標になっていました。産前準備していなかった私のおっぱいは傷がつき、授乳が苦痛に。体も辛いのに…唯一楽しみといえばご飯とおやつくらいでした。(←このご飯とおやつにも後々苦しめられることになるとは…)
殆ど寝むれず、落ち着いて生活することもできず、やつれにやつれ・・・でもなんとか退院することができました。これからは人目を気にせず自分のペースで過ごせる!何より安心して寝られる〜と解放されたような気分になっていました。
…が、退院したその日の夜、物凄い寒気と胸の張りと痛みに襲われ、どうしたらいいのかわからずパニックに。授乳しようとしたら胸はガチガチで赤ちゃんは吸えず大泣き・・・私の頭はクラクラしてきて熱を測るとなんと40度越え・・・体温計を見るのも怖いくらいになっていました。
翌朝すぐに病院に。「乳腺炎です。薬出すのであとはマッサージ受けてください」とあっさり言われました。
マッサージの痛いこと!終わってタオルと見ると緑色のおっぱいでいっぱいになっていました。乳腺が詰まり膿んでいたものでした。(この膿のおっぱいを飲んで抵抗力がついたのか?娘は風邪もほとんど引かない健康優良児です)
家に帰り薬を飲もうかと思いましたが…赤ちゃんに影響ないのか心配になり飲めませんでした。どうにかしないと…と不安に思いながら市からもらった子育て支援の冊子を見てみると新生児訪問の葉書を見つけ、ワラにもすがる思いですぐに電話しました。
明朝、こんにちは〜と素敵な笑顔で訪問してくださった助産師さんが坂根さんでした。私には運命の出会い!
精神的にも肉体的にも限界だった私は、赤ちゃんそっちのけで捲し立て気味にこれまでの話をしました。終始にこやかに「はい。うん。そうなのねぇ〜」と聞きながら赤ちゃんの状態を確認してくれる坂根さん。坂根さんの笑顔を見ているだけでほっと落ち着きをとりもどせました。赤ちゃんも体重測定や股関節や背骨の確認、うつ伏せのトレーニング方法などを教えていただき、いよいよおっぱいを診ていただきました。すごく丁寧に詰まりやすい乳腺の箇所、赤ちゃんの向きを変えて吸わせるフットボール抱きの方法、膝の上に座らせて首を固定しながらカポっと正面から吸わせる方法、添い乳(横に寝ながらの授乳)の方法などをわかりやすく教えていただきました。
詰まりやすい乳腺に沿って赤ちゃんの得意な吸う角度で合わせて吸わせてみると・・・あの硬いおっぱいはなんだったの?と思うくらい柔らかくなっていくのがわかりました。私はどうやら幸せなことなのか?おっぱいが沢山出る体質で、授乳後に自分でマッサージをして残っているおっぱいを絞り出す方法も教えていただきました。
おっぱいだけでなく、食生活のアドバイスもいただきました。…お米を中心に野菜とお魚。日本人の体にあった和食をバランスよく!やはりパンやお肉類、動物性の脂肪、糖分はおっぱいが詰まりやすくなるというお話でした。食生活まで考えていなかった私。入院中の食事はバランスの取れたものだし!と勝手に思い込み、気にせずおやつも完食。よく思い出すと「お祝い御膳」といって出産祝いに出してくれるご飯の内容は…お赤飯にステーキにグラタンにプリン、他にもキレイに盛り付けされた豪勢な御膳でした。…あんなに喜んで食べていた自分…とほほ。
「この調子で頑張ってくださいね〜何かあったら連絡ください〜ではご機嫌よ〜」とサラッと笑顔で帰っていかれました。
魔法にかかったかのように、気持ちもおっぱいも落ち着き、薬を飲まなくてもこのままセルフケアをしながら工夫していったらおっぱいだけで育てていけるかも!すごい!と安堵しました。
が…慣れない赤ちゃんとの生活、産後すぐの発熱による体力の消耗、家事をちゃんとできない自分、旦那の仕事が始まり、日中一人で赤ちゃんを育てていけるのか不安になり、落ち込み、自分がつい寝てしまっている間に赤ちゃんに何かあったらどうしようと考えて全く眠れなくなってしまいました。…今考えるとプチ鬱状態だったんだと思います。
やはりまた乳腺炎になってしまいました。
しかも前回よりもひどい状態に。すぐに坂根さんに来てもらいましたが、坂根さんでも不安になるくらい重症…。坂根さんのお師匠様にも来ていただきました。
おっぱいマッサージをしてもらいましたが、痛くて痛くてもう気絶寸前。おっぱいごと取ってくれ!と叫びたくなるくらい痛かったです。今思い出してもゾッとします。
なんとか詰まりも取っていただき、なんとか乳腺が開通しました。
周りが炎症しているので「キャベツ湿布」を教えていただきました。キャベツは葉を1枚もぎとり良く洗ってそのままおっぱいに被せるのです!こんな使い方があるなんて!
乳腺を落ち着かせるためにも冷やした方がいいのですが冷やしすぎると逆効果だそうで、キャベツ湿布はちょうど良い冷え具合でした。先人の知恵とはなんて素晴らしいんだろうと涙しながら坂根さんとお話しました。
その後何度か詰まりましたが修行の成果がでたのか?自分一人でも対処できるようになり、なんだかんだで娘が3歳になるまで授乳を続けました。
検診の時に虫歯になるからと断乳を勧められましたが、娘がいらないと言うまで続けました。(というのは建前で…本音はまた乳腺炎になるのではという恐怖が拭えなかったからです)
卒乳はどうしたらいいのか?と悩み坂根さんに相談しましたが、「自然にでいいんじゃなぁーい」と言われ、娘も幼稚園に行くようになり、気がついたら自然と卒乳できていました。
人間の体って、母性ってすごいなぁ〜とつくづく思いました。
いつも的確でおっぱい以外の相談にも乗って寄り添ってくれ、沢山の素敵な言葉をくださいました。いろいろな心配事にぶつかっても、坂根さんがいてくれるから大丈夫!という安心感に守られて乗り越えていけたのだと思います。
2人目の時は、妊娠中から乳腺炎のことばかり考えていました。
だいぶ時間も経つのに…私のおっぱいは大丈夫かしら?と不安に思い、前回の教訓を元に、早めに坂根さんに相談し、おっぱいの状態を見てもらいました。
私の心配をよそに、「大丈夫〜今までの経験があるから何かあっても対処できますよ〜自信持って!」と。この坂根さんからの言葉をお守りに頑張ろうと前向きになれました。
今回は娘の時とは違う病院での出産でした。自室で赤ちゃんとお母さんのいいタイミングで授乳して、心配な時だけ授乳室でどうぞ〜というかんじでした。
看護師さんに、最初からこんなにおっぱい出るなんてすごいわね〜1人目の時大変だったでしょ〜と声をかけていただいた時はもう大盛り上がりで話してしまいました。
今回は入院中、食事も自分で気をつけ、授乳も工夫して気持ちをゆったり持つことを心掛けてみました。
自宅に帰ってきて最初は少し不安でしたが、なんとかやっていけていると思っていましたが…ちょっと授乳の向きが悪かったり、位置が悪かったりすると男の子なので?吸引力がすごくて乳頭がバックリ切れてしまい…ウトウトしながら授乳をし終えて息子の顔を見ると、えっ!吸血鬼!?と言わんばかりに口の端から血が垂れていてギョッとすることもありました。乳腺炎とは違う痛みで授乳が怖くなりましたが、坂根さんにすぐ相談し対応策を教えて頂きなんとか乗り越えられました。
1人目の教訓を生かし、自分でも詰まっているところを確認できるようになり、対策グッズを駆使し、自分の体は自分が一番よくわかる!と言い聞かせ、なんと言っても坂根さんがいてくれるという安心感も後押ししてくれ、息子の時もなんだかんだ3歳ちょっと前まで授乳を続けました。
今思うと、あのキラキラした目で赤ちゃんが自分を見てくれる、一生懸命おっぱいを吸ってすやすや自分の腕の中で眠る…人生で一番優しい幸せな時間だったのだなぁと思います。
私にとっては出産よりも痛いと思った乳腺炎、苦痛という気持ちから幸せな時間だったという気持ちに変えてくれたのは坂根さんだったと感謝しています。
出産前からおっぱいのお手入れをしておくことの大切さ、そしてなんでも相談できる坂根さんと知り合って安心感をいただいておくことで、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても大切な素敵なおっぱいライフが送れることとおもいます。